東京経和会では小田中研究科長・学部長をお招きしました
10月28(金)、東京経和会では、小田中直樹経済学研究科長・学部長を講師に迎えて、交流セミナーを開催しました。
平日の18時半開始という、仕事を抜けにくい方もいる日程でしたが、会場参加者は27名と定員一杯(仙台からも2名駆けつけてくれました)。オンラインでは現役学生を含めて25名が参加。合わせて50名超と、コロナ前に匹敵する参加者を得ての開催となりました。小田中ゼミOB・OGに、恩師との絆を深める機会を提供できたことも幸いでした。
冒頭、三野耕司東京経和会会長(昭和54年卒)からは、小田中先生が仙台二高出身との紹介もあり、先生をぐっと身近に感じてのスタートとなりました。
小田中先生には、大学を取り巻く環境の変化と、その中で学部がいかに時代の要請に応えた変化を遂げているかについて、歯切れよく親しみやすい口調でご説明いただきました。
例えば、データサイエンス分野(統計学の応用分野と理解しておけば良いでしょう)。
昨今、「データ」は、「鉄」、「半導体」に続く産業のコメ(米)とも呼ばれ、ビジネスに欠かせないものです。そうしたデータを分析できる人材の育成が叫ばれているところです。
先生のお話を伺うと、実はこの分野、細谷雄三名誉教授以来の伝統で、東北大学経済学部には教官数も多く、学会内で高い評価を得ているのだそうです。(40年程前に私が受講した細谷先生の計量経済学の授業では、当時には珍しくプロジェクターを使っていたことが印象に残っています。その先生が世界的に有力な米国の学会誌の編集委員を務めていると知ったのは、うかつにも卒業後のことでした)。
最近では、2019年度にカリキュラムが一層充実され、「データサイエンス」、「ビジネスデータ科学」が開講されたとのことです。
また、2020年度入試では、理系入試が導入されたとのこと。受験間近になって志望を文系に変更した学生など、より幅広い人材を受け入れることで、データサイエンスを学ぶ学生が増えることが期待されます。
さらにはこの10月、経済学部が監修して講師陣を提供する「東北大学データサイエンスカレッジ」がスタートしたとの紹介もありました。今の時代に必要とされる学びの機会を社会人に提供するとともに、民間企業との共同研究の促進を図るための施策だそうです。人生100年時代にあってリスキリング(学び直し)は避けて通れない課題。OG・OBにとっても朗報ではないでしょうか。
地域経済への貢献の面でも、新たな展開に驚きです。
地域の企業が新たな事業を創生し、雇用を生み出せるかどうかは、地域経済にとってとても重要なことです。かねてより経済学部の地域イノベーション研究センターでは、「地域イノベーション・プロデューサー塾」と銘打った教育プログラムを地域企業で働く人材を対象に展開してきたそうです。地域での事業創生の担い手育成です。
そして今年度、この塾は津軽海峡を越えて北海道に進出したとのこと。東北地方での実績を背景に、北海道の地元経済団体のバックアップを得てのことだそうです。ゆくゆくは全国展開も視野に置いているとか。東北大経済学部発の教育プログラムを経た人材が、全国各地で活躍する姿がみられるかもしれません。なんともダイナミックで夢のある取組みではないでしょうか。
質疑応答での話題は、入学後初期段階でのデータサイエンス教育の現状から、海外との競合における大学院教育の重要性に至るまで幅広く、小田中先生には、それぞれ丁寧にご回答いただきました。「(寄付以外で)卒業生に期待すること」といった質問には、先生からは、「今の卒業生は名前も知られていないスタートアップ企業に入ったり、起業したりする者もいる。彼ら・彼女らを応援してほしい」旨の回答がありました。名の通った企業に就職することが当たり前であった時代に卒業した私にとっては、世の中の変化が印象付けられ、自らに求められていることを改めて感じさせられる場面でした。
最後に、お礼の挨拶に立ったのは小佐野美智子副会長(平成21年院卒)です。自ら社会人として大学院で学んだ経験を踏まえ、母校への感謝と、経済学研究科・学部の益々の発展を期待する言葉が贈られ、交流セミナーは締めくくられました。
終了後、あるOGが漏らした「こんな大学なら、もう一回入りたい」という感想が、参加者の共感を呼んでいました。これは母校への最大の賛辞ではないでしょうか。私達が学んだ大学は、当時の姿に留まってはいません。変化する母校の姿に刺激を受け、誇らしく思うことができ、同窓会ならではの豊かなるひと時でした。
竹澤秀樹(昭和61年卒)記