東京地区経和会 第42回交流セミナーが開催されました

東京地区経和会(会長:三野耕司、昭和54年卒)では、11月22日、東北大学東京オフィス(サピアタワー10階)において、第42回交流セミナーを開催しました。会場には46名が参集し、オンライン参加者を合わせると総勢約60名が参加する盛会となりました。オンライン参加者のうち9名が在校生であり、この人数は過去最多となりました。

(開会前の様子)

三野会長の開会挨拶に続いて行われた講演会では、講師として経済学研究科准教授の藤原綾乃先生を仙台よりお迎えし、「距離を超える経営 ~人材と技術が国境を越えるとき、企業に何が起きるか~」をテーマにご講演いただきました。

(挨拶する三野会長)

(藤原先生による講演)

講演では、いわゆる「失われた30年」における日本の電機産業の技術流出の実像と、技術者の国際的な交流が活発になった現代において、日本企業が「技術の流入」をどのように競争力強化に生かすかについて、研究成果に基づきお話しいただきました。


先生のご研究では、米国特許データを用いて人材の国際的な移動を可視化し、日本の電機産業において日本人技術者がどのような経路で中国・韓国・台湾など東アジアの企業へと流出していったのか、また、どのような技術者が流出したのかを明らかにしています。分析結果からは、流出した技術者の多くが日本の重要特許に深く関与してきた精鋭であることや、その移動が東アジア企業の技術力向上や日本の電機産業の地盤沈下の一因となったことが、定量的にも裏付けられているとのことです。


一方で先生は、これからの日本企業の巻き返しのカギは、単に技術流出を防ぐことではなく、いかに技術の「流入」を戦略的に取り込むかにあると指摘されました。半導体産業における技術者の移動データを可視化した最新のご研究では、世界各国の優秀なエンジニアが国境を越えて行き来する「技術の循環」が進んでいる実態が示されています。日本にもすでに129カ国から約4万人の外国人エンジニアが来日しており、とくに中国やインド出身のエンジニアは、特許出願数などの面で高い成果を上げる傾向にあることが、分析から明らかになっていると紹介されました。


先生は、流出と流入を統合的に設計する「距離を超える経営」を通じて、外国人材に選ばれる環境を整備するとともに、受け入れた人材を最大限に活かすための仕組みをどのように構築するかが、今後の日本企業の競争力の要諦であると強調されました。また、こうした取り組みを企業レベルにとどめず、人的資本の循環を国の政策としてどう構想するかという視点も重要だと指摘されました。講演は参加者にとって大変示唆に富むものであり、講演後も質疑応答が途切れることなく続き、活発な意見交換が行われました。

(講演後の記念撮影)

場所を移して開かれた懇親会には多くの方にご参加いただき、会場が手狭に感じられるほどのにぎわいとなりました。活気と熱気に包まれた会場では、瞬く間に異業種間の情報交換が始まり、経済学部卒業生の活躍の広がりとつながりの力を改めて実感するひとときとなりました。締めくくりは恒例の「伊達の一本締め」。次回交流セミナー(2026年2月14日)での再会を期して、お開きとなりました。

(令和4年卒 淺井 優汰)

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